しわしわの赤ちゃん

なんだか僕らは焦っちゃうよね、疲れちゃうよね。

わざわざ作ってるのは未来だよね、思い出なんかじゃないよ

「しわしわの赤ちゃん」

排水口にへばった髪の毛たちは

みじめな音を鳴らしてもなお

へばっていた

私のマグカップは埃まみれで

暖かいコーヒーを注げば

それは浮かんだ

そんな大それたことじゃない

月が消えただけの早朝

最後に吐かれたひどいことばで

最後になっても

部屋に飲みかけのペットボトルがたくさんあって

どれが一番新しいものかわからない

閉鎖された田舎の残暑

じとりと流れる汗が

シャツに染みたままで

少女が窓の外からりんごを投げた

庭に埋めた時計草の花は

前よりも少し、

色が薄くなっていた